——そんな経験はないでしょうか。
その原因は、筋力不足ではなく「筋肉の使い方」、特に連動の問題があるかもしれません。
なかでも見落とされやすく、そして体の使い方を大きく変える可能性を持っているのが、内転筋の中でも機能的な役割を担うICアダクターという内転筋の一部です。
少しマニアックに聞こえるかもしれませんが、その働きはとてもシンプルで実用的。
理解することで、立つ・歩く・しゃがむといった日常の動きが驚くほどスムーズになります。
今回は、このICアダクターを軸に「機能的な内転筋の使い方」についてわかりやすくお伝えしていきます。
内転筋は、太ももの内側にある筋肉のグループで、骨盤から大腿骨にかけて広がっています。
主な役割は、脚を内側に閉じる「内転」という動きです。

内転筋は太ももの内側にある筋肉群で、脚を内側へ閉じる「内転」の動きを担っています。
トレーニングジムの内ももマシンや、ボールを膝で挟むエクササイズを思い浮かべる方も多いかもしれません。
こうしたイメージから、内転筋は「脚を閉じるための筋肉」と認識されることが一般的です。
もちろんそれは間違いではありません。
ただ、実際の体の動きの中では、内転筋の役割はそれだけではありません。
むしろ本当に重要なのは、立つ・歩く・しゃがむといった日常動作やスポーツ動作の中で、体を安定させながらスムーズに動かすための働きです。
その機能に注目すると、内転筋の捉え方は大きく変わってきます。
体を動かすとき、特定の筋肉だけが単独で働くことはほとんどありません。
歩く、立ち上がる、物を取るといった何気ない動きでさえ、複数の筋肉がタイミングよく連動することで成り立っています。
どこか一つの筋肉を鍛えたのに動きが良くならない。
むしろ違和感が増えたり、別の場所が張ったりする。
こうした現象は、筋力の問題というより「連動」がうまくいっていないときによく起こります。
反対に、筋肉同士の連動が整うと、大きな力を出さなくても体は安定し、動きは驚くほど軽くスムーズになります。
力んで頑張る動きから、自然に動ける感覚へと変わっていくのです。
そして内転筋の中には、この「連動」を引き出すうえで特に重要な役割を持つ部分があります。
機能的な内転筋、ICアダクターって何?
その重要な役割を担うのが、ICアダクター(イシオコンダイラー・アダクター)と呼ばれる内転筋の一部です。
主に大内転筋の後方の繊維を指し、坐骨付近から始まるこの領域は、一般的にイメージされる「内もも」とは少し異なる働きを持っています。
この部分は、内転筋でありながらハムストリングスと非常に相性がよく、動きの中で自然に連動します。
脚をただ閉じるのではなく、骨盤や股関節を安定させながら体を支え、次の動きへとつなげていく。
まさに「機能的な内転筋」と呼ぶにふさわしい存在です。
ICアダクターがうまく働くようになると、内もも・お尻・ハムストリングスがバラバラに頑張るのではなく、ひとつのチームとして機能し始めます。
ここが、体の使い方が変わる大きな分岐点になります。

ICアダクター(大内転筋後部)は、ハムストリングスや大殿筋と連動しながら骨盤と股関節の安定性を支える重要な筋肉です。
ICアダクターが機能し始めると、まず骨盤の安定感が変わってきます。
骨盤が無理なく落ち着いたポジションに収まり、股関節がスムーズに動ける状態が整います。
すると、ハムストリングスやお尻、さらに体幹の筋肉まで自然に連動し、体全体がひとまとまりになったような感覚が生まれます。
力で固める安定ではなく、「繋がっているから安定する」という状態です。
この連動が出てくると、立つ・歩く・しゃがむといった動きが驚くほど楽になります。
余計な力みが減り、前ももや腰に頼っていた動きから解放されていきます。
特別に筋力が上がったわけではないのに、「体が軽い」「動きやすい」と感じるのは、この連動が生まれたサインです。
ICアダクターがうまく働いていないと、体は安定を求めて前ももや腰、外側の筋肉に頼るようになります。
その結果、動きはできているのに、どこか頑張っている感覚が抜けません。
——こうした特徴がある場合、内転筋、特にICアダクターの連動が十分に活かされていない可能性があります。
多くの人がこの状態にありながら、それに気づかないまま「筋力が足りない」と考えてトレーニングを重ねています。
しかし、本当に必要なのは筋力の上乗せではなく、連動の再構築であることが少なくありません。
ICアダクターを機能的に働かせる代表的なエクササイズの一つが、「アダクタープルバック」です。
このトレーニングの目的は、内転筋を強くすることではありません。
ハムストリングスやお尻、体幹と連動させながら、ICアダクターが自然に働く環境をつくることです。
最初は思うように感覚がつかめないかもしれません。
しかし、無理に力を入れる必要はありません。
呼吸に合わせながらゆっくり行うことで、少しずつ内ももの奥に力が集まる感覚が出てきます。

右向きで行うアダクタープルバック。左脚を後方へ引きながら、左膝でタオルを軽く押し、左内ももの奥にじんわり力が入る感覚を意識しましょう。
①右向きに寝て、股関節と膝を約90度に曲げます。
②両足は壁につけ、頭の下にはクッションを入れて首や肩の力を抜きましょう。
③両膝と両足首の間には、それぞれタオルやクッションを軽く挟みます。このとき、左膝が左足部より少し低くなるように調整すると、ICアダクターが働きやすくなります。
④準備ができたら、右足で軽く壁を押します。その状態を保ったまま、鼻から息を吸いながら左脚をゆっくり後方へ引きます。
⑤次に、口からゆっくり息を吐きながら、左膝でタオルを3秒ほど優しく押します。力いっぱい押すのではなく、左内ももの奥にじんわり力が入る程度で十分です。
⑥再び鼻から息を吸いながら左脚を後方へ引き、息を吐きながら左膝でタオルを押す、この流れを4〜5呼吸繰り返します。その後、一度力を抜いて元の姿勢に戻り、同じセットを4〜5回行います。
本記事で紹介したエクササイズは、PRI®(Postural Restoration Institute®)の考え方を参考にしています。
※PRI®およびPostural Restoration Institute®は、Postural Restoration Institute, LLCの登録商標です。本記事では、同研究・教育体系の考え方を参考にしています。
アダクタープルバックで大切なのは、回数や力の強さではありません。
腰や前ももばかりに力が入る場合は、リラックスして息を吐けていなかったり、腰が反ってしまっている可能性があります。
リラックスし、呼吸に合わせてゆっくり行い、内ももにじんわりと力が入るのを感じられれば、このエクササイズの目的に近づいています。
アダクタープルバックは、見た目はシンプルなエクササイズですが、実際にやってみると「内ももに効いている感じがしない」「前ももや腰ばかり疲れる」という方も少なくありません。
「これで合っているのかな?」と感じたら、無理に続ける必要はありません。
一度、体の使い方を理解している専門家に確認してもらうことで、驚くほど感覚がつかめることがあります。
柏接骨院では、PRI(Postural Restoration Institute)の考え方を学んだスタッフが、内転筋やハムストリングス、体幹の連動を確認しながら、一人ひとりに合わせた運動指導を行っています。
「何度やっても感覚がつかめない」「本当に正しくできているか確認してほしい」という方は、お気軽にご相談ください。
内転筋のトレーニング自体が間違っているわけではありません。
ただ、脚を閉じる動きだけを繰り返しても、体全体の機能的な動きには結びつきにくいのが現実です。
大切なのは、内転筋を単独で鍛えることではなく、ICアダクターを中心にハムストリングスや体幹と連動させながら「使える状態」にしていくことです。
この視点を持つだけで、トレーニングの質も、日常動作の感覚も大きく変わっていきます。
体は、本来とても合理的に動くようにできています。
どこかを無理に鍛え込まなくても、連動が整えば自然と安定し、楽に動けるようになります。
もし今、体の使い方に違和感があったり、トレーニングの成果が思うように出ていなかったりするなら、内転筋の「鍛え方」ではなく「使い方」に目を向けてみてください。
ICアダクターという視点が、その感覚を変える大きなきっかけになるはずです。
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